司法書士さくら夙川事務所

家族信託のリスクと注意点 司法書士が教える

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家族信託のリスクと注意点 司法書士が教える

家族信託のリスクと注意点 司法書士が教える

2024/07/22

平成18年に信託法が改正されて以来、民事信託、いわゆる家族信託が注目されています。家族信託は、財産管理において有効な方法である一方、注意点もあります。今回は、家族信託に関するリスクや注意点について、司法書士の専門家が解説します。家族信託を検討している方は、必見の内容です。

目次

    家族信託とは

    家族信託とは、家族内で資産管理を行う信託のことです。家族信託の特徴の1つとして、時間軸で効力が発生しますので、生前中の認知症対策として、そして相続における将来の資産分配に関する不安を解消する手段として利用することもできます。 家族信託は、信託契約を締結するか、遺言書に記載することにより成立します。特定の家族が「委託者」として財産を信託し、「受託者」である別の方に財産の管理を託し、信託の利益である受益権を信託「受益者」として受け取る仕組みです。この委託者、受託者、受益者という三者が信託組成上の主な登場人物となります。契約をする際には、信託の目的を明確に定め、信託財産の運用方法について細かく記載します。 家族信託は、資産管理の面で大きなメリットがあります。例えば、不動産で言えば、実際に名義を受託者名義に所有権移転しますので、信託が開始された以降は、信託契約の内容に沿って、受託者がその不動産の管理運用処分をします。

    家族信託のリスクとは

    家族信託は、資産管理の手段として注目されている制度ですが、その中にはリスクが存在しています。まず、1つに受益者等課税の取扱いです。上記に記載しました通り、家族信託は受託者に名義を変更して管理運用を行っていただく仕組みですが、課税はあくまで受益者に発生します。従って通常、家族信託を組成する際は、委託者兼受益者として、受益権が元の委託者から移転しないようにすることで贈与税といった課税が発生しないような設計にすることが多くあります。例えば高齢になった配偶者や、障がいを持つ子供を受益者とすると、それに対して贈与税が課税されることになりますので、注意が必要です。また受益者を当初委託者として変更しない場合にも当然所得税等の課税が発生しますので、そちらに関しても注意が必要です。受益者が変更されたタイミングで発生する税金があるということをご理解下さい。

    受益者等課税の受益者「等」という表示

    「受益者等課税」の「等」とは何を指すのでしょうか?

    受益権を有する者を指しますが、「みなし受益者」ということで信託を変更する権限を有するもので、信託財産の給付を受けることができる者と言われています。簡単に記述すると信託契約をいつでも自由に変更できるような受託者はみなし受益者とみなされる可能性があり注意が必要です。信託契約の中で、「本信託は、信託の目的に反しない限り、受託者と受益者または受益者代理人との合意により変更することができる。」と受託者が単独で自由に変更できる内容ではない、ということを明確に示しておく必要があります。またこの信託財産の給付を受けることができる者には、残余財産受益者は含まれますが、帰属権利者は含まれません。この両者については定義の説明をする前に記述しておりますが、いずれも信託契約の内容において、契約を最後終了させる際に必要となる役割の者です。

    信託することで損益が分かれる?

    上記に記載したとおり信託は受益者に対して課税が発生します。所得税の申告も受託者ではなく、受益者が申告する義務があります。信託の注意点としては賃料収入があるような不動産を信託する場合です。通常は受益権を移転させないように、委託者兼受益者を不動産を所有する父、受託者を子として信託を開始して、不動産の管理処分権限を子に移転させる、という手法が多く取られますが、信託をすることでその不動産から発生する損失を他の利益が出ている所得と合算することができなくなります。損益通算、という考え方ですが、通常信託する前は、不動産で出た赤字を給料や年金所得から差し引くことができるのですが、信託すると信託した財産の所得は他の所得と合算することは税務上認められていません。また、通常は赤字が出た場合、その損失を3年間、青色確定申告をしている場合は7年間繰り越しすることができますが、信託をすることで損失の繰り越しもできなくなります。他にも信託をすることで税務上の制約を受けることがいくつかあります。

    信託はプラス財産しか信託できない?

    また信託する不動産にアパートローンのような借入がある場合、この借入の処理も難しい問題になります。信託できる財産は基本的にはプラスの財産が想定されており、マイナスの財産は含まれません。ただし、法律法21条に信託財産責任負担債務という規定があり、マイナスの財産であっても信託財産が返済の責任を負うものが定められています。実際に信託する財産に抵当権といった借入がある場合、この信託財産責任負担債務ということで、受託者が返済を引き継ぎを担って行くことが考えられますが、この借入を引き継ぐことが相続税上の債務控除の問題とも絡みあうため非常に複雑な問題が生じます。金融機関との協議も発生しますので、アパートローンが残る財産の信託は専門家の意見を聞きながら慎重に設計いただくことをお勧めします。

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