司法書士さくら夙川事務所

親族間の不動産売買における贈与税の注意点

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親族間の不動産売買における贈与税の注意点

親族間の不動産売買における贈与税の注意点

2024/06/26

不動産の売買取引において、親族同士であっても、贈与税がかかる場合があります。司法書士業務において、親族間で不動産名義を変更されたいという相談は非常に多く、手続き的な問題だけでなく、贈与税の注意点を十分に把握しておくことが必要です。本記事では、親族間の不動産売買における贈与税の基礎知識や注意点について解説します。

目次

    親族間の不動産売買とは

    親族間での不動産売買とは、家族や親戚間で行われる土地や建物の売買のことを指します。この場合、売主と買主の間に信頼関係があるため、仲介業者を介さずに取引が成立することが多くあります。 親族間での取引の場合は、契約書が作成されないこともあります。法律上、売買契約は諾成契約といって口頭であっても合意があれば契約が成立しますが、税務申告上の対策や、売買代金の支払いのために金融機関の融資を利用する場合は、必ず書面での契約が必要とされます。また、価格の適正を担保するために、書面で作成した売買契約書に不動産宅建業者の判が求められることがあります。また不動産の価格が市場価格より著しく低額で契約されている場合は贈与税の問題が発生することがあります。

    贈与税のリスク

    贈与税とは、相続税のひとつです。不動産は一物三価、と言われるように、様々な見方によって価格が決められています。公示価格(時価に近い価格)、相続税評価額、固定資産税評価額です。相続税評価額はいわゆる国税庁が毎年7月1日に発表する路線価と言われるもので、公示価格の80%の価格になります。固定資産税評価額は公示価格の70%と言われています。親族間の売買でこれらの価格より著しく低い価格で売買をすると、本来第三者間で取引される場合の価格との差額に対して実質的な価値の提供があったとされ、その差額に対し贈与税が課税される可能性があります。贈与税は、受贈者、贈与を受けた側が負担する税金になるため、贈与を受けた方は不動産の名義変更のために必要な登録免許税、都道府県税である不動産取得税、国税である贈与税の負担をすることになります。不動産取得税は建物と共に贈与することで非課税になるケースもありますので、贈与、売買する前には、具体的にどのくらいの税金負担が発生するかを試算した上で実行することが好ましいでしょう。

    贈与税を回避する方法

    贈与税には、基礎控除となる価格が設けられていますので、基礎控除以下であれば贈与税は課税されないというルールがあります。受け取る方について年間110万円と決められています。この仕組みを利用して不動産の名義を移すことをされる方もおられます。注意点としては、基礎控除があるのは贈与税についてですので、登録免許税や不動産取得税については基礎控除がありません。国税としての贈与税は課税されなくとも、他の税金がかかる場合がありますので、やはり実行する場合には注意が必要です。司法書士に依頼するケースでは司法書士報酬は都度かかることが通常ですので、それらの費用を計算した上で実行するかどうかを判断されることが好ましいでしょう。

    親族が経営する会社と取引するケース

    会社経営をされている場合、賃料収入を個人ではなく、経営する会社で受けたいという場合があります。その時も上記に記述した不動産の価格の設定が重要になります。収益不動産であれば、確定申告等により決算書上の簿価が定まっている場合がほとんどですので、確定申告を依頼している税理士のアドバイスにより売買価格を設定することが多いです。親族が経営する会社に所有権を移す場合は、不動産の売買価格だけではなく、利益相反行為となることにも注意が必要です。会社は本来株主の所有ですので、株主の不利になることはできません。従って取締役が個人として所有されている不動産を自らが取締役を務める会社が買う又は売る場合は、会社の利益を侵害しない、株主、あるいは会社が了承したということを証明するために、株主総会あるいは取締役会を開催し、どこの不動産をいくらで買うのか、その売買契約について承認を取っておく必要があります。この議事録は所有権移転を行う際に法務局に提出を求められる書類になり、印鑑証明書も求められますので、手続きの際には注意が必要です。

    注意すべき手続きと注意点

    親族間の売買について述べてきました。親族間や親族が経営する会社に名義を変えられたいケースは非常に多い相談ですが、派生して検討する税金の問題がありますので、専門家に相談した上で実施することをお勧めいたします。またその対象の不動産を売却することなどが想定されている場合、もしくは個人の方が保有する場合は必ず相続というタイミングが発生しますので、前者であれば譲渡所得、後者であれば相続税の負担がどうなるのか、という点もしっかり考慮されることが望ましいと考えます。その不動産を賃貸して収益をあげられるのか、居住されるのかによっても、税務上の取り扱いルールが異なります。当事者としてはどのタイミングで税金が課税されるか、トータルでどれくらいの税金が負担することになるのか、が判断の際には大きな決め手となることも考えられますので、実行する際の「点」でとらえるのではなく、時間軸を加えた「線」で物事の決断を行うような視点をもっていただくことをお勧めいたします。税務関係にも精通した弊社では税理士等の意見も取り入れてアドバイスすることを心がけています。

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