司法書士さくら夙川事務所

不動産登記法改正で変わる不動産登記簿の取り扱い方法とは?

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不動産登記法改正で変わる不動産登記簿

不動産登記法改正で変わる不動産登記簿の取り扱い方法とは?

2024/06/18

不動産の全部事項証明書、いわゆる「不動産登記簿」という書類が法務局で取得できます。古くから不動産の売買や賃貸借契約において実務上土地所有者や担保権者の確認のためなどに利用されてきました。しかし、昨今の所有者不明土地が拡大していることを受け、不動産登記簿に関する法律には大きな変化が起きる法改正がされています。このコラムではその改正について触れてみたいと思います。

目次

    相続登記の義務化を受けて

    先のコラムでも記述しましたが、令和6年4月1日より、相続登記が義務化されました。相続があり、自身が所有権者であることを知ったときから3年以内に登記名義を変更する義務が課せられました。これまでも表示登記については登記義務がありましたが、不動産の権利の登記と言われる登記について義務化されたことは初めてで、昨今問題となっている所有者不明土地が九州くらいの面積に広がっていること、このままこの問題を放置すると人口減少が進み、地方の空洞化が激しい日本において地域の衰退や都市政策において足かせとなることを防ぐ狙いがあると考えられます。実はこの不動産登記法の改正と同時に行政が積極的に不動産に対して職権で対応していくための法律が立案され国会において可決されていますので、以下紹介していきます。

    広域交付制度の運用開始

    不動産登記法が改正される前に、戸籍法の一部を改正する法律が令和元年5月24日に成立しています。そして、令和6年3月1日から施行されています。そのうちの一部が、広域交付制度と言われるもので、従来戸籍謄本、抄本の交付は各市区町村のコンピューター・システムがネットワーク化されていないため、本籍を置く市区町村でしか発行できないという不便さがありました。改正によって本籍地以外での市区町村においても戸籍謄抄本の発行が可能になっています。ただし、現時点での運用は、本人、配偶者、父母、子、などの直系血族に限られ、代理人による請求は不可であること、請求に際して写真付き身分証の提示が不可欠であり、健康保険証や年金手帳といった顔写真がない本人確認資料では対応できないこと、必ず本人が窓口に出向く必要があり、実際の利用に関しては事前予約が必要であったり、窓口交付で数時間待たされることになるなど、実際は制度に現場が追い付いていないというのが現状です。しかし、相続登記がされていなかった現状として、必要資料であった戸籍等の取得が煩雑で、本籍地でしか取得できないという理由も少なからずあったため、そのハードルを下げたということは言えそうです。

    相続登記の義務化を受けて今後施行される法律

    相続登記の義務化を推進していくために、相続登記がされていないことを法務局が把握する必要があります。運用当初は、法務局は登記に際して提出された遺言書や遺産分割協議から登記がされてない不動産について登記官が把握するということが想定されているようですが、より積極的な把握をするために、相続登記の義務化の他にも、不動産登記法が改正されています。大きな改正でいうと登記名義人の氏名、住所変更が義務化されたこと、またその住所氏名の変更があったことについて登記官が職権で変更ができるようになることです。この改正は令和8年4月1日から施行されます。これまでは住所氏名変更は、登記手続きとしては求められていましたが、変更期限はないものでした。改正後は変更後2年以内に行うことが義務づけられ、変更しない場合は5万円以下の過料が課せられます。また、主に法人についてですが、商号や会社住所を変更したことを受け、登記官が職権で不動産についても変更ができるようになります。法人は商業登記を変更するだけで、その法人が所有する不動産について職権で登記が変更がなされることになります。現時点で個人については、本人より申出があるときに限られます。

    住民基本台帳ネットワークシステムとの連携

    それでは法務局はどうやって登記名義人が変更していないことを把握するのでしょうか。実はその点もシステムの変更がされています。従来から住民票を管理する地方公共団体情報システム機構は、国の機関等から請求があったときは個人の本人確認情報を提供することと法律により定められていました。しかし既存の住民基本台帳ネットワークシステムから情報を取得することは法律などの仕組みとして難しい状況にありました。今回の法律改正により、個人の住所、氏名に加え、これまで法務局が把握してこなかった、個人の生年月日も登記申請の際に申請人から提供させることで、法務局が個人の死亡情報、住所情報を把握し、登記記録が変更されていないことを確認できる仕組みになります。これは従来までの制度と異なり大きな改正と言えそうです。

    登記簿謄本の取得方法の変更

    今回の改正で法務局が職権で不動産の登記簿を整理していくことがわかりました。そして令和8年2月2日以降は、法務局で自分が所有している不動産が全国においてどれほど存在しているのか、ということを請求できるようになるとされています。これは従来からあったように感じる仕組みですが、現行の法務局では、不動産の所在、地番、家屋番号がわからなければ証明書を取得することができませんでした。相続税の申告等においても、先に市区町村にて固定資産税の名寄せを行い、その名寄帳に従って、法務局で不動産登記簿を取得するということがされておりました。それが改正により、自分が所有する全ての不動産を開示請求できるようになります。請求者は、本人、その相続人、法定代理人、本人から授権を受けた資格者代理人、ということが想定されており、地主が所有する不動産を調べたいといった、セールス、営業に利用する目的では使うことはできなさそうです。今回の法改正は、所有者不明土地問題を解消するために法務局と一般市民にある程度不動産の記録を管理することを求める狙いがあると考えています。不動産登記に関する取扱いは大幅に変わっていきます。個人的には、いよいよ国に資産を把握され、管理されていく段階であるという言葉にならない感覚ですが、ポジティブにとらえて凄まじいスピードで高齢化と人口減少が進む日本を維持し守っていくための制度であると考え、司法書士として依頼者の方に正確な情報提供をさせていただきたいと考えます。

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